エコツアー大賞
著者プロフィール

吉田千春(よしだちはる)

吉田千春

フリーライター。海外旅行業界紙の記者を経て、ワーキングホリデーでニュージーランドへ。帰国後は、国内外のガイドブックやロングステイ関連本の取材・製作などに携わる。ワーホリ時代にハマったトレッキングが本格化し、ここ数年は冬山も通っております。

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ニュージーランドハイキング vol.2

トレッキング準備で?マーク連発!

ルートバーン編 その1


 キーサミットに出かけた翌日からルートバーン・トラックに向う準備が始まった。 日本語雑誌に自ら企画を持ち込んだ「トレッキング特集」には、日帰りのガイドウォークだけでなく、山小屋に宿泊する本格的なトレッキングの体験談も載せる予定だったので、どこかのトラックを歩く必要があったのだ。ルートバーンを選んだ理由は3つあった。

ルートバーントラック
世界遺産の中を歩く人気のトレッキングコース

 まずグレートウォークと呼ばれる国内有数の人気トラックであること。日本人旅行者にも知名度が高いこと。そして2泊3日の行程で32キロを歩く、比較的短いコースであることだ。 32キロのどこが短いねん、と怒りそうになったものの、他の有名トラックは50キロを越えるものが多く「来れるもんなら来てみんかい!」と言わんばかり。明らかに初心者には敷居が高かった。その中でルートバーンは「あら、あなた山は初めて? ま、来てもいいわよ。あたしでよければ」と言ってくれている気がしたのである(私の頭の中ではね)。

 コロミコトレックでトレッキングの道具や衣類についてアドバイスをもらったものの、私は不安でいっぱいだった。なにせ見るもの聞くものすべて初めてのものなので、説明を受けてもよく分からない。「雨具はごあてっくす、ですか? で、こっちのシャツがぽっ....ぽりぷり....ぽりぷろぴれんですか? ははあ」てな感じだったのである。「ゴアテックスは透湿性があるから汗をかいても中にこもらず、水分を外に出してくれるんだ。ポリプロピレン(以下ポリプロ)は、汗をかいても雨に濡れてもすぐに乾くから便利だよ」とスタッフから衣類の大切さを教えられ、とりあえずゴアテックスの雨具のレンタルを頼み、なぜかキウイに大人気だというポリプロのしましまタイツを購入することにした。

テアナウ湖
テアナウ湖は南島では最大の湖だ

帰り道、私は湖沿いにあるテアナウ・バックパッカーズを訪ねた。この宿に長期滞在して山に通っている日本人の女の子と話をするためだ。彼女は名前をエリコといい、ワーホリでニュージーランドに来てから山にハマり、すでにいろいろなトラックを歩いたという。 エリちゃんのアドバイスは実に女性らしいものだった。 「コッフェルで食事をした後、男の人はコッフェルをざっと拭くだけなんだけど、次の食事の時にそのまま使うのは気持ち悪いでしょう。小さくカットしたスポンジを持っていって洗うといいよ。あと髪をまとめたり、手を拭いたり、首に巻いて虫よけにしたりできるからバンダナは必需品。それから山小屋で濡れたものを干す時に洗濯バサミがあると便利かな。荷物を極力減らしたい時は、下着の着替えの代わりにパンティライナーを持っていくといいよ」。
 なるほどねー。コロミコのお兄さんたちにこの発想はないだろうなあ、と私は感心してしまった。男の人なら腰に両手をあてて「パンツは毎日同じのをはけ。それが山というものだ」とふんぞり返って言うかもしれない。だが女性には耐えられないこともあるだろう。女性ならではのトレッキング必需品があるのだ。

ルートバーンは予約が必要

 話を聞きながら熱心にメモをとっていると、ふいにエリちゃんが「私も一緒に行ってあげようか」と言い出した。「私の道具を貸してあげられるし。話をしているうちに私も行きたくなってきたよ」。なんとありがたいことだろう。1人で山を歩く不安から解放された喜びで、私はまたもやおばちゃんと化し、半泣き状態で彼女をバシバシたたきながら「いやーうれしー、むっちゃうれしー」と叫び続けて礼を言った。
 そうと決まれば話は早い。翌日我々はテアナウ湖畔にあるDOC(自然保護省)のオフィスを訪ねた。前述の通り、ルートバーンはグレートウォークと呼ばれる人気トラックのひとつでDOCの厳しい管理下にあるのだが、中でも特にトレッキング希望者が多いミルフォードとルートバーンは入山規制を設け、完全予約制としている。テアナウのDOCオフィスはグレートウォーク・ブッキングデスクとも呼ばれており、ミルフォードとルートバーンの予約業務を行っているのだ。
 短い旅行の間にルートバーンのトレッキングを計画するなら、旅行出発前にこのオフィスにコンタクトを取り、ファックスやE-mail、あるいは手紙で何度かやりとりをしなくてはならないが、テアナウに住んでいる私たちにとって、この作業は実に簡単なものだった。DOCのオフィスで、カウンターの女性に「ルートバーンに行きたいんですけど」と告げると「OK、明日なら空きがあるわよ」と返事がかえってきたのである。
 お姉さんは地図を示しながら、なかば誘導尋問のように「たいていの人は2軒目のマッケンジー・ハットと3軒目のルートバーン・フォールズ・ハットに泊まるけど、それでいいかな?」と聞いた。コース上にはあと2軒の山小屋があるそうだが、とりあえず一般的な行程で歩くほうがいいだろうと、言われる通りに予約をとる。さらにスタート地点であるザ・ディバイドまでのバス、終了点であるグレノーキーからクイーンズタウンまでのバスの予約と支払いを済ませる。なんと10分足らずですべての手続きが完了してしまった。
 あとは食糧の買い出しだ。我々はスーパーに出かけ、レーズン入りの食パン一斤、まずいと評判のマギーのインスタントラーメンを2つ、りんごとキウイを1つずつ、ミューズリーバー数本とシリアルの小箱を2つ、ビスケット1箱、オイルサーディンの缶1つ、チョコレート、ミルクパウダー、ジュースの素などを購入した。  いよいよ明日からトレッキング! エリちゃんという師匠を得たことで勇気が湧いたからだろうか。その晩の私は、まるで遠足前の小学生のようになかなか眠れなかった。

VOL.3へ続く

楽園を歩くニュージーランドハイキング目次Vol.3