ニュージーランド・楽園を歩く
エコツアー大賞
著者プロフィール

吉田千春(よしだちはる)

吉田千春

フリーライター。海外旅行業界紙の記者を経て、ワーキングホリデーでニュージーランドへ。帰国後は、国内外のガイドブックやロングステイ関連本の取材・製作などに携わる。ワーホリ時代にハマったトレッキングが本格化し、ここ数年は冬山も通っております。

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ニュージーランド「エコツアー」(注1)という言葉には、ちょっと、いえ、かなりの思い入れがあります。

海外旅行業界紙の記者だった90年代、私はよく「日本人の海外旅行って、どうよ?」と、今思えば、かなりエラそうなことを考えていました

 当時の海外旅行はパッケージツアーと団体旅行が主流でしたから、旅先はおのずから、団体に対応できるホテルがある場所、つまり有名観光地か大都市、大型リゾートなど、人が集まる場所ばかりが商品化されていました。しかも、日本の旅行会社が使うホテル(注2)はだいたい同じなので、海外なのに周りにいるのは日本人ばかり、ということもありました。

 少人数で、地元の雰囲気が味わえるような静かな場所に行くパッケージツアーを作ることは、「数の原理」で旅行代金を安く抑えてきた旅行会社にとって、まったく違う発想を求められることだったんですね。

 参加者の数を抑えれば、料金を上げないと採算が取れない。でも当時は5000円、1万円の差を争う激しい価格競争が繰り広げられていましたから、「そんな高いツアー、誰も買わないよ」という結論になる。で、商品化が見送られていたわけです。

 日々、旅行業界の取材をしていた私は、そういう事情を理解しつつも、できることなら、自分が心から楽しいと思える旅を広める仕事がしたい、と考えるようになりました。

 「エコツアー」の存在を知ったのは、その頃です。当時、オーストラリアやニュージーランドで注目を集めるようになっていたエコツアーを取材した時、モヤモヤしていたものが、すっと消えた気分になりました。

「自然って面白い~」という、目からウロコの発見もありましたし、「見せ方によって、普通の森やビーチが見どころになる」ことや「少々値段が高くても、内容に納得すれば、お客さんはお金を払う」ことも、発想の大転換に思えました。

ニュージーランド ペンギン標識それ以外にも、エコツアーには画期的なことがたくさんありました。例えば

「地元や自然に詳しい人がガイドになる」

「お客の数を制限して、環境への影響を最小限に抑える」

「ツアーの収益の一部を自然保護にあてる」

「人が訪れるので、地域の過疎化防止にもなる」などなど。

意外なところでは、「お客を歩かせてもよい」(注3)ことも、衝撃でした。当時は、お客を歩かせるとクレームになる、と心配する旅行会社の人が多かったんです。

なんだか、すべての答えが見つかった気分でした。

私は「エコツアーってすごいな!」と1人感動しまくり、単純な頭で考えました。「ニュージーランドに行って、エコツアーの現場を見たい。で、エコツアーに強いライターになろう」と。

で、心底単純な私は、それから3年後にニュージーランドへ旅立ったのでした。え、行動力がある?思い切りがいい? やだー、そんなことないよー(妄想の中で謙遜中)…と、いい気になって書いていたら、おそろしく前置きが長くなってしまいました。すみません。次回はツアーについていろいろお話したいと思います。お楽しみにー。

(1)エコツアー (注1)

 定義としては、いろいろな考え方がありますが、まずはガイドがその土地の自然の魅力や歴史について詳しく解説してくれること。そして訪れる場所の環境を壊さないよう配慮されていることです。つまり、ガイドがどんなにいい解説をしたとしても、そのツアー会社が、自然への影響を考えずにお客を取って荒稼ぎしていたら、それは絶対に、エコツアーとは呼べません。

(2)日本の旅行会社が使うホテル (注2)

 日本のパッケージツアーで使うホテルは、お客からのクレームを避けるため、下記の点を満たすホテルが優先的に選ばれます。

  • 中級以上であること。(中国とかアジアのパッケージツアーで日本に来る方は、ビジネスホテルに泊まったりしますが、日本人の旅行ではありえません)
  • ツインベッド仕様の部屋が揃っていること(特に中年以上はダブルが大嫌い)
  • 同じタイプの部屋が一定数、揃っていること(部屋が違うと、「山本さんの部屋はうちより広いわ!」なんて参加者同士で話題になり、クレームになります)
  • フロントのスペースが確保されていること(毎朝の待ち合わせ場所として必要)
  • バスタブがあること(お風呂好きですからねー)

(3)お客を歩かせる (注3)

今では、ハイキングや街の散策をするツアーはたくさんありますが、「体験型の観光」というのが流行り始めたのは90年代の中ごろでしょうか。日本の旅行業界の優れたツアーを表彰する「ツアー・オブ・ザ・イヤー」の第一回表彰(94年)では、ヨーロッパでお客さんを歩かせたツアーがグランプリに輝いていますが、それだけ、当時は「お客さんを歩かせる」ということが特別なことでもありました。